数学にも「伝統」がある

長い間続いて、それなりに意味のあるものを「伝統」という。甲子園出場の常連校には、例えば「裏山の神社に続く100段の階段ダッシュ10本」とか、「野球部員は毎年開催している校内マラソンレースで必ず~位以内に入ること」などのような「伝統」がある。それができた部員がベンチ入り→レギュラー選手になる。

数学でも同じ「伝統」がある。それが「定番の出題」だ。なにしろ数学は人類とともに存在するから、単純には「1万年」才だ。たかが13才~15才の子供がかなうわけがない。だから「大体これができてくれればレベルが上がっても大丈夫でしょう」という型式を固める問題をやる。

そのために30年ぐらい、ほぼ似たような問題が掲載されているのがおわかりかと思う。そもそも私からしても、中学生の時に同じような問題を解いて、やり方を覚えて、試験に応用してきた。これで50年ぐらいは「ほぼ同じ」だし、教えた先生も自分が学生の時に同じ問題を見たことがある、と言っていたからほぼ100年ぐらい、ということになるかも。

内容に変化はなかった

数学に関しては準拠問題集の検討も必要で、教科書だけを検討しても意味がないことは、これでおわかりになったと思う。「ゆとり」だ、「ゆとり脱出だ」とかけ声をかけても、実はその内容=学習事項に変化はない。今は中2年の「式の計算」だけを題材にしたが、どの分野でもほぼ同じである。

定番の出題に変化がないのだから、当然それを基礎としたプリント類も同じだったことは、私の記憶にある。さすがにプリントまでは保存していないけど(仮に保存していても、きっとインクが蒸発していて読めないだろう)。

さて現場から、どんな時でも「定番の出題」は守られていた、と報告した。そして「ゆとり世代だから」とひとくくりにして軽蔑するような態度は、嫌いであると、どこかでも述べたことがある。さらに弁護の材料として、統計的に「『ゆとり教育』で学力は落ちていない」ことを証明した人がいることを、紹介しておく。ぜひ読んで欲しいのが、下の記事だ。

「ゆとり世代」学力低下はウソだった~大人たちの根拠なき差別に「ノー」を!

もっとも「学力」の調査内容に関しては、少し疑問の部分もあるし、「PISA型学力診断」自体が良いもの・正しいものなのか・適正なものなのかどうかも不明で、反対派もいることはいる。

そういうところではなく問題は

「ガベージニュース」
国語算数理科社会、子供が得意な教科はどれだろうか(2016年)(最新)

さて、いわゆる「優秀な人間」とは、三国志に登場する曹操を評した「治世の能臣、乱世の奸雄」みたいな人をいうのだろうが、そんなレベルは、普通の人間には無理なので、「70%ぐらいは正確にその修了学年の内容で」、国語の読み書き、数学の計算や文章問題、英語の読み書きや話すことができるなら「学力がある」と言うことにしておく。これならPISAでもやっていることだから、「ゆとり教育」でも十分学力があったことになる。

じゃあ問題はないな、今後は勉強する事も増えるのだから、と思うだろうが、別のデータもある。
私はこちらの方が「日本の現在の実情」をきちんと反映していると考えている。どうもOECDの方は「良くできる人だけを集めたデータ」のような気がしてならないのだ。

そのグラフがここにあげたものだ。特に「1教科あたりの平均「得意教科」回答率」は、見事に私自身の実感に合っている。

サイト運営者も
1教科あたりの平均「得意教科」回答率…小学5年がピークで、以降は学年が上がるに連れて値は減少していく。学校の勉強そのものに難儀している、得意と言えるほど満足できる理解や成果を出すことが出来ない実情が透けて見える」と秀逸にまとめてくれていて、現場にいる私は全面的に賛同する。

まだ続く。