国語の話が続いているので、もう少し継続する。

質問する人が質問の仕方をあまりよくわかっていないので、こちらが補って説明することになるが、「国語って、どれぐらいできるようになればいいのか、を具体的に教えて欲しい」、ということが多い。

うむ~と、私がとりあえず国語分野で取り上げる例が「芥川龍之介」と「羅生門」だ。ただし中学1年生にはまだ難しいから、中学2年~中学3年の最初ぐらいかもしれない。

こんな感じで質問に答えられるかを確認する。

①「芥川龍之介」という名前が書けて、読めるかどうか?
②国語の教科書に掲載される彼の代表作品は「羅生門(1915年=大正4年初出で、1917年=大正6年に出版」か、「杜子春(1920年=大正9年)」だが、そもそもこの2作品の存在を知っているか。
③知っているなら、どちらも漢字で書けるか。
④彼が活躍した時代はいつか。また彼はどのように死んだか。
⑤彼の他の作品を知っているか。それを漢字で書けるか。

以上で①~③でいわゆる偏差値30~40というところ。できない人は論外。

⑥「羅生門」の描いている時代はいつか。
⑦「羅生門」の内容を大体でも知っているのか。大体が無理なら少しは知っているのか。

以上で偏差値なら45~50ぐらいになる。

以下「羅生門」の内容を知っていることにして、

⑧「羅生門」に出ている「下人」は若いか年寄りか、判別できるか、その根拠は何か言えるか。
⑨「羅生門」のテーマは、何だと思えるか。

ただしこれは選択問題にしてあらかじめ答を用意しておくこと。自分で考えるのは難しいから。

以上で偏差値で50~55ぐらいになる。

さらにその上は
⑩「羅生門」が書かれた時代の、実際の政権運営していた人たちは誰か。
個人名ではなくグループ名でよいとする。もし高校生ならここで「藤原良房から始まる歴代藤原政権の担当者」が、出てこないとだめかも。


⑪「羅生門」のような状態が、なぜ都で起きていたか理由を知っているか。
これも選択問題にしてあらかじめ答を用意しておいてもよい。もし高校生なら「荘園の創設」「軍事と造作」と「蝦夷討伐」が出てきて欲しいところだ。

⑫芥川龍之介は以上の事から、ある説話集に精通していたことがわかるが、その名前を述べなさい。またその著作集から、換骨奪胎して作り上げた作品は何か答えなさい。
エピソード的に知っているぐらいの情報収集能力は欲しい。何事にも貪欲に、だ。

以上でいわゆる偏差値60~65前後になると思う。
できれば⑩⑪については、班田収授法のほころびの原因と、藤原氏の政権運営の特徴まで、述べることができれば「満点」かもしれない。

で、とどめで偏差値65以上を目指す、あるいは偏差値を超えたところ=自分の考えを持っているかどうかでの勝負が、

⑬「羅生門」のような時代に、自分が生きていると仮定するなら、どのような生き方を選択するか。

これは自由に書いて欲しいところだ。書けない、というのは論外で、とにかく書いてもらう。無理なら選択問題にして、選ばせた後、理由は自分で書くことまで要求したい。

なんでこんなことを述べたか

今度の大学入試改革は、①~⑧あるいは、⑫までを、すべて飛ばして、いきなり⑬を高校レベルで要求するということになるだろうと予測していたし、そうなりつつある。

天才 芥川龍之介の創作した「羅生門」を、「自分から読んで」、「自分で感想を作って」、「自分で問題点を考える」ようにならないと、いけないわけです。しかもそれを討論の材料にできるように練る・練ることができるようにならないと、いけない訳です。

……できるんでしょうか?

今の学校、特に公立の小学校や中学校の体制で、高校生になった時に、そういう生徒を養成できる下地を整えることが、できているのだろうか。

特に今の小学校の国語の授業は、「宗教」か「道徳」と化していて、「文章の読み方・考え方」を基礎から指導することに特化した授業が、少ないように見える。言葉に鈍感な生徒が多いのは、その証拠だろう。だから、戦後ず~と、中学数学で不得手なポイントのトップは「文章問題」なのだ。

おかげで苦労している。 もっと学校には頑張ってもらいたい。
確かに小学生の読書量は増えたようだが、ただ単に読んでいるだけかもしれないし、高校になると、とたんに量が下がる。また「古典的名作」を読む人も、少なくなってきているのも確かだろう。

読めない人が増えている、と言ってもよいのかもしれない。
読書にも「技術」が必要なのは、あらゆる識者が述べているから。