英文構造の紹介もひどいものだ

次に肝心な英文の紹介、つまり「英語の文の正しい並び方」をどう紹介しているかについて考察したいが、溜息しか出ないぐらい、ひどい。昭和16年11月27日に、いわゆる「ハル・ノート」を読んだ東郷外相が 「目もくらむばかり(の)失望にうたれた」と言ったのが、わかるような気がするぐらいだった。

今まで多くの教科書を見てきたが、恐らく最悪だろう。そしてこれは、今まで、営々と英語教育の先人たちが築いてきた英語の学習道を、粉々に破壊したものとも言える。某経済再生大臣の「酒類販売店へ金融部門からの引き締め」方法を、記者会見で堂々と発表して袋叩きにあっていたように、最近の日本の政治家の劣化は激しいものがあるが、それに似ている。

ちょっとその前に一言申し上げたいことがある。
1990年代以降、「コミュニケーション英語育成」の掛け声のもと、多くの英語教師が努力を継続している(と思われる)が、あれから30年以上を経過しても、生徒の英語力が向上した印象は、私にはない。

つまり文科省がず~っと声高に「高校生の半数以上が英検『準2級』以上合格」と主張してきた目標が、全然達成できていないように思うからだ。データーがないのに、勝手なことを言うなと非難されそうだが、なにしろその肝心なデーターを、英検側が2014年以降、出していないから、推測と印象で判断するしかない。

英検の合格者の数はどうなった?

私が学生だった頃から、大学を受験する高校3年生は「英検2級合格」というのが、理系はともかく、文系生徒には一種のラインだった。1990年代に在籍していた「私にとってのキセキの世代」は全員が公立高校に通っていたが、そこに通う他の生徒さんたちも、かなり英語を(だけに関わらず他の科目も)がんばっていた印象がある。現に「キセキの世代」の半数以上が英検2級には合格していたし、名前も顔も知らない彼らの友人・級友たちも、40人クラスでだいたい10人~15人ぐらいは、各クラスで合格していたと記憶している。

私は長い間、この仕事をやってきた個人的感触を通して、そのレベルに及ばない高校生が現在では、大半ではないか、と考えている。というのは、近年にも、結構多くの公立高校生や名の知れた私立高校生諸君らの学習を見ているし、彼らの級友たちの行動や結果からも、そう結論せざるをえない印象が強いからだ。

そこで数字をはっきりさせたいな、と思って調べてみると、英検側は、2014年以降「所属学年別データ」を公表しなくなっている。これはどうしたことだろうか? よほど「都合の悪い真実」が含まれているのか? もし全国の高校生が目標の50%前後、英検2級に合格していたら、嬉々として発表しているはずだからだ。

一応2013年のデーターをまとめたサイトがある。これを見ると、データー公表の2013年でもびっくりする。

英検準2級合格率高校生は34%、英検2級合格率は24%:2級取得者は公立高校生の3.6%である

だから共通テストと抱き合わせで、無理矢理に英検を受けさせたかった=合格率を上げたかったのか、と納得している。動機が不純だったために、結局おじゃんになってしまったのは、TOKYO オリパラ 2020 と同じだ。