そうでない場合に人は助言をするだろうか

対して、少し勉強しただけで眠いとか疲れたと文句を言い、予習復習を怠り、困難に立ち向かうことを避けてしまう子供に育ててしまった親・保護者に、誰が秘訣など教えるだろうか。仮に教えても実行は不可能だろう、なら教えるだけ無駄だ、と考えてしまうだろうし、そもそもそういう人たちには近づかないだろう。

苦労して子育てを成し遂げ、受験に成功した親・保護者にお祝いを申し上げると、帰ってきた言葉の中で、秀逸で、今も忘れられないものが、これだ。

「子育てに失敗するぐらいなら、破産した方がマシですから」

そしてそんな思いを、子を思いすぎることを、実は少し恥ずかしいと思う人が、他人に自分の行動を打ち明けるわけがない。古来、計画は密なるをもって良し、である。

しかも、まだ終わらない

私には子供の時にものすごく良く勉強のできる級友がいた。小さいころから習っていたので、絵もうまかった。彼はある有名私立中学に入学し、そのままその上の高校に入り、大学生1年の時に再会した。大学は阪大の工学部だという。

「母さんが『下宿は絶対にダメ。家から通える大学にしなさい』というので、十分行けたけど、京大はやめた。ほんとキツクて、うるさい。オレ、京都で住みたかったのに」と文句を言っていた。

記憶では、柔かい笑顔のおばさんで、あまりイメージが重ならないし、また裕福な家なのになぜかな~とは思った。家に帰って父と母にこうこうだ、と伝えると、彼と彼の家族のことを覚えていた2人は「当然だ」という。「理由がわからないお前は、まだ修行が足りない」とも言われた。学生の一人暮らしはお金がかかるからかな?とは思ったが、もっと大きな理由があるのがわかったのは、少し後、オウムの事件が起きてからだ。

オウム事件でわかった

1995年までにオウム関連の事件が連続で起きて、一味は一網打尽で逮捕された。私は希代の詐欺師・麻原彰晃本人にはあまり興味がなく、むしろその下で悪事を働いた中川智正と豊田亨(ともに死刑執行済み)という、若い人物になぜか注目してしまった。

中川智正は岡山県立岡山朝日高校から京都府立医科大学へ、豊田亨は兵庫県の白陵高校から東京大学理学部・大学院へ進んだ秀才中の秀才だった。その中川の母親がテレビレポーターのインタビューを受けるシーンが事件直後に流れた。

涙ながらに「中川が何かの拍子に変わってしまったことを止めることができなかった自分が悔しく、情けない」と話す姿を見て(顔はわからないし、気の毒で見たくない)「ああ、犯罪者になっても、その母は母なのだな」とある意味感動した。

優秀だからこそ監視を怠ってはならない

そして友人の母が「一人暮らしはダメ。家から通える大学に行きなさい」と言った意味がわかったような気がした。オウム事件を起こした彼らは駿馬だった。しかし手綱さばきを誤り、旱馬=暴れ馬になってしまったのだ。狡い習慣がついた子供の監視と矯正を怠ってはいけないのは当然として、優秀な人でも、優秀だからこそ、歪んでしまうと周囲に害を及ぼす度合いが大きくなるため、絶対に監視を怠ってはいけない、とわかった。

子供が少なくとも結婚して、できれば親になるところまで目を離してはいけない、その極端な失敗例だろうが、あの親不孝者め、と中川に思わざるを得ない。

さて、重い話が続いたが、ついでに「暮らしニスタ」にある「子育て失敗か?」というコーナーも見て欲しい。う~んどうかな~という例が上がっているが、でもまだまだ取り戻せると思う。

同じように、仮に高校入試で失敗したとして、まだまだ人生は続く。そこで取り戻せば良いのだ。