恋愛は妨げになるのか

「恋愛」は現実のものでもいいし、空想上のものでもいい。面白いことにたいてい勉強が手につかなくなって、「被害」にあうのは男子だ。女子は意外に大丈夫だが、もちろんだめな女子もいるから、一概には言えないかもしれない。確認しておくが、女性に罪はない。ただ最近は同性を好きになることもオープンになってきたから、性別は関係ないだろう。どちらにしてもこのケースにあてはまる真実だ。

さて、どうしたらいいのだろうか。手っ取り早く「振られ」てしまえば良いのだが、それはちょっと可哀想だ。大人でも恋愛したらなかなか自制できない。不倫で家庭を壊した、犯罪をした、ストーカーをしたという話はどこにでも転がっている。ましてや視野の狭い思春期の人たち。自制しろ、そんなことやめて勉強しろというのは無理だ。

夫婦喧嘩が犬も喰わないという。ましてや中学生ぐらいの恋愛では、猫が舐めに来ることもしないだろう。そもそも我が子がよっぽどオープンな性格なら別だが、秘密主義が憲法の中学生が、誰かのことを好きなだ、ましてや親・保護者に知られるなんて、ますあり得ない。基本は結局、放置しておくしかない。

しかし災害時の避難行動も、訓練していた地方はスムーズに活動できるのと同じで、日頃からご子弟と「恋愛」に関しての一般論ぐらいは話題にあげておく必要はある。人間である限り、たいていは誰かを好きになったり嫌いになったりするようにできいているのだから、避けて通ることはできない。

まずは気になる相手がどんな人間であるか情報を探るためには、いきなり1対1の状況を作るのではなく、グループで交際することから始めなさいとか、人間は相対的な存在だから、誰かから〇であっても、誰かからは×の人もいるとか、相手に気に入られるために何かをするのではなく、相手が気になるように自分が何かになるとか、相手が嫌がることは絶対にしないなど、成人していく過程における思春期の男女の(同性の場合の可能性もある)在り方について、ある程度レクチャーしておくことだ。人生の過ごし方の練習として捉えてもらいたい。

その上で、トラブルもあることを知ってもらわなければならない。トラブルの例ならこの世にたくさん転がっているから、中学生には適切なものをあげて、「こんなんなったらだめだよ」と教えておくことも必要だ。

人とのつながりは目に見えない

人は誰とつながっているのか、表面からはわからないことも絶対に指摘しておく。よくある例が、気になる女子Aをからかう男子Bがいたとする。でもその男子Bの苦手とする、あるいはボス的存在の男子または女子Xと実はその女子Aが深くつながっていて(幼馴染とか、実は2人は互いを好きだったりとかで、小説のストーリーでよくあるベタな展開のように)、手痛くしっぺ返しをXから喰らい、それが原因で、男子Aはクラスで孤立することもあるとか、シチュエーション別に説明しておくことも要求されるだろう。国語を指導していて、最近の若者は「妄想」はよくやるが、「連想」や「想像」が下手なのを痛感しているからだ。

どんなことでも急に対応することは難しい。よっていきなり恋愛モードに突入するより、日ごろからこのようなシュミレーションを親・保護者とご子弟の間で行っておくことが、結局は危機管理につながる。

すでに始まっていたら

しかし親・保護者が知った時はすでに突入していることもあるだろう。そのような時は、まずバイアスのかかっていない相手の情報を客観的に得ることが必要だ。特に相手の親・保護者の在り方がポイントで、まともな方たちなら、割合安心だ。

問題は、そうでない場合だ。この仕事をしていてこれまた痛感しているのだが、子供の出来が悪くても、親・保護者が良い場合はよくあるが、親・保護者がいい加減だと、子供はほぼ間違いなくいい加減だからだ。遺伝というより環境のなせるわざと考えらえれる。環境が遺伝していると見るほうがよい。とにかくできるだけ相手と接触しないように、仕向けていかなければいけないだろう。

しかし相手である子供を直接「どうもね」と指摘することは、返ってやめた方がよい。「恋愛を障害を推進燃料とする」と言うからだ。だから「あの子はいいけど(本心はそう思っていなくても)、親御さんがちょっとね」と表面的には不機嫌になっておけば、そのうちにご子弟も「家内安全策」に切り替えてくれる可能性が高くなる。そのあたりの呼吸が大切だ。