「熊を殺すと雨が降る」という本を読んだ

最近「山ブーム」らしい。子供の頃は父親とよく山に登りに行ったが、今は椅子に座りっぱなして、脚が衰えているので近所にある300mの山でも途中でダウンしそうだ。もう少し鍛え直してから、挑戦することにしたい。また海も苦手だ。波が延々と打ち寄せるのを見ていると引き込まれそうだし、海の中にいる生物のことを考えると食べられそうで、やっぱり怖いからだ。

しかし山や海についての書物なら好きである。自分が直接影響を受けない環境にいるからだと思う。今まで読んだ中で、一番印象に残っているのは「熊を殺すと雨が降る」と言う本だ。元々、最近の流行の本には全く興味がなくて、著者には失礼な言い方だが、いわゆる「変な本」のほうが好き、という性分もある。

そもそも題名が変で、言い伝えに「熊を殺すと雨が降りやすい」という現象がある。しかしこれは前後が逆らしく、「雨が降りそうな天気になると、それを敏感に感じ取る山の動物は、巣に帰る時に、いつもは通らない道を通るので、人間に遭遇しやすくなる。その人間が狩人の場合、熊を仕留めるから、その後、熊の死を悲しむかのように山に雨が降る」というわけだ。まるで銭洗い弁天みたいな話だ。

で、この「熊を殺すと雨が降る」は山に生きてきた人々の記録、と言ってよい。まず熊の捕獲方法から詳しく説明してある。追い詰めて銃で撃つ、というイメージしかなかったが、冬眠している熊の穴に入り込んで、背中合わせで押し出す、という方法もあると書いてあった。そんなことできるのだろうか。いや、できたから、こう記録に残っているわけだし。冬眠している熊のそばに近寄るところから迫力がある。熊の鼻息まで聞こえてきそうだ。

自然について述べた本を最近の生徒は読んでいるのか?

熊を捕獲した後の解体⇒料理方法も詳しく紹介されている今はネット動画で気軽(?)に見ることができるので、心臓に自信のある方は解体の方法も見たほうがよい。リアルな話で、熊一頭で100万円ぐらいになること、胆は薬になるから、季節によって「でき」が違い、値段も変わること。生血はおちょこ一杯までで、それ以上飲むとお腹を壊す、ともある。それだけ生命力にあふれているわけだ。

そうか熊は食べることもできる、と改めて思い出した。さいとう・たかおの描いた名作「サバイバル」だ。40年前の漫画とは思えないほどの作品。あの中にも少年が捕獲した熊を食べるシーンがあった。そして熊の毛皮を着て森を歩くシーン。なんだか熊を食べたくなった。イノシシは何度も食べたけど、熊はまだない。これはビジネスに誰かしないか?

最近、熊の被害が大きい。もし殺してしまうのなら、それが、無駄な殺生にならないように、なんか方法がないか。そういうことができる料理人はいて、設備があるのか?また野生の熊を食材で出しても法律には触れないのか?色々と疑問がわいてきた。

同じ事が海についても言える。魚肉は天然ものと養殖ものの割合が現在では6:4ぐらいから、5.5:4.5ぐらいになっている。それでも半分以上は海が「与えてくれるもの」だ。これをもっと詳しく書いている本、つまり「熊を殺すと雨が降る」みたいな「海に関する妙な本」を探している。

今、日本人はあまり山から「財物」を手に入れていない。杉を植えすぎて花粉症になるぐらいなら、やはり「山の文化」の復活が望まれる。「サバイバル」の中にはカモシカを槍で刺殺し、解体するシーンもあった。獣肉は今は「生産」されているが、元々は山が「与えてくれるもの」だった。このような歴史を、副読本の教科書で良いから作って都会の子供にも読ませるべきだろう。

しかし「自然には勝てない」という真理を,阪神淡路大震災や、東日本大震災などの地震被害から学んだはずなのに、「ゼロコロナ」を叫んでいる人が多いのは不思議で仕方がない。ウイルスも自然の産物だと思うのだが。