最近はあちこちに「神」がいる

最近「神」という言葉を、「素晴らしい」という意味で「神サンドイッチ」とか「神解答」とか、よく生徒が使っている。安易な神様が最近多いな、と思っていたら人気漫画「ワールド・トリガー」でも「神」が登場した。なんだ、漫画の話か、とお思いの方もいるだろう。

変な言い方だが、私は学生、つまり子供が興味があるものに、興味がある。職業の対象が何を好み、何が嫌いなのか、を知っておきたいからだ。もしかすると、私も「子供」なのかもしれない。

この漫画の中では、星のエネルギーをささえる特殊な力を豊富に持つ人たちを強制的に狩り集め、何百年も、星と同化させ、エネルギーを得る、という意味で「神」だそうだ。「金の雛鳥」とも呼んでいた。もちろん自由意志ではなく、強制的に「狩り集める」わけで、言ってみれば拉致を企む異世界違法集団と地球の防衛軍との戦いがメインテーマという図式は「お約束」でもある。

で、興味深いのは「ワールド・トリガー」の中で使われている「神」の概念は、私の認識する日本の神様に近いようだ。このような考え方が子供の中に広まるのは、大変良いことだ。日本の神は、たいてい元は人間で、戦いに敗れたり、男女の仲を引き裂かれたり、子供を奪われたりして、悲惨な死に方をしたから、逆に「勝利」「恋愛成就」「子授かり」のご利益がある。

日本の宗教観、神道に対する考え、概念は私に言わせると、うわべだけで、本質を見せていない、真実に迫っていない気がする。本音と建前の建前が強調されて、本質が隠されすぎている。ただ単に有難がっているだけだ。

日本の神については、あまりはっきり教えてくれない

例えば、せっかく神社にお参りに行っても、神様の正面に立てなかったり、神様がこっちを向いていなかったりすることがある。あるいは神社そのものが「ご神体、信仰の対象」と言われるもの、その方角を向いていなかったりすることもある。京都の下賀茂神社や、島根の出雲大社、奈良の大神神社などだ。

それがなぜなのかを説明することができない神社関係者がいる。知っていても、教えてくれないのかもしれない。そんなことは知らなくていい、と思っているのか。そのくせお賽銭や、入場料を取ったりする。まるで神様は人質だ。

また「神社は動かせない」と良く言うが、日本書紀を読めば、崇神天皇の御世には「勢いが強くて宮中に祀れない」から天照大神は外に出された、とある。その後、天照大神はあちこち移動しているから「元伊勢」という別名を持つ神社が多い。この点だけからしても、天照大神は大昔ではあまり重要視されていない。そもそも「アマテラスオオ(ミ)カミ」と読むのか「アマテルオオ(ミ)カミ」と読むのかも不明だ。

神様より動かしてはいけないのが、祟り石とかの方で、こちらは本当に道路の真ん中にでーんと置いたままになっている。神様より、祟り石の方が怖いらしい。

庶民が、その神様の正体と由来を知ってしまうと、何か災厄でも起きるのだろうか?天が裂け、地が割れ、不信心者に雷でも落ちてくるのか?それともメイン・コンピューターが暴走して、個人情報が流出するのだろうか?「災厄」は神様と直接関係のない私たちではなく、神道関係者の「隠し事」がばれるのが「災厄」なのではないか。もっとも隠しているほうが良いという判断かもしれないが、隠されると、知りたくなるのが人情なのは、夕鶴と同じだ。

「ワールド・トリガー」や他の本質をついた漫画などがもっと流布して、もっと「日本の神」の正体を子供たちが知るきっかけが増えればいいな、と思う。やはり大人より、子供たちの方が数段先を行っているのは確かだ。