社畜には悪いイメージしかないが

いつの頃から使われ始めたのか不明だが、「社畜」という言葉がある。たいていは悪いイメージが先行していたが、最近は社畜でどこが悪い、チームワークでやっているのだから、集団利益優先は当然だ、という考えも出てきた。

「学校に通って大勢の人に混じって勉強する」というシステムが予定しているのものは「集団で何かある目的に向かってスムーズ進む」ことを実現することだ。だから会社に入って働く際に「役に立つスタイル」を作りやすくしておく方が、自分にとっても利益になる。

これを個性がない、とか、日本の社会が行き詰っている原因だ、と指摘する人も多い。確かにそういう面もあるだろうし、学校になじめない人もいるのは事実だ。これを延長して「個人で頑張れる人間をもっと育てるべきだ」という意見もある。これもある意味正しい。しかし日本人に限らず、大多数の人間が、「集団で何かある目的に向かって進む」ことに向いている事実は否定できないし、集団でいたからこそ、人間は地球上で成功することができた。だから良い社会人、会社人になるための良い方法を知ることは、大いに有効だと思う。

そこで「社畜のススメ」という本をざっと読んでみた。福沢諭吉の「学問のすゝめ」みたいな題だ。覚えているだけのことを紹介してみると、これが「良い生徒」の見本みたいで、やはり面白い。

【1】とにかく「失敗しない」を最重要課題にする。ヤバいと思ったら、上司に必ず相談する!
【2】2倍の量と2倍のスピードを目指せ!
【3】ビジネス書は必ず「前書き」から読め!
【4】バレンタインには女性社員にチョコを贈れ!
【5】職場の「昔話」を古参の社員から聞き出せ!

まず1だが、私自身が「失敗は成功の元という言葉はウソに近い。失敗は失敗の元と考えよう。そんなに粘り強い人はいない。いてもエジソンとかの変人だ。普通人は、失敗を重ねると、嫌になるから慎重に、正しく、解き方を覚えよう」と塾生に良く言っているのと重なって面白い。また上司というのは先生とか学習指導者のことだから、危ない問題は指導してもらった方が絶対にいい。

2は「勉強したらすぐに復習、何回も復習して覚えるまでやる。基礎は見聞きして『知っている』だけではダメで、基礎は覚えてしまうことが大切。覚えていないのは、何もしていなのと同じだ。それは悔しくないか」とよく言っている。

3は「なぜ小題を飛ばして読み始めるのか。題も本文のうち。頭から読みなさい。題も考えなさい。それが考え付くヒントにもなる」もよく言っている。

5は「成功した先輩や先生の話を聞いて、そうなるように努力し、失敗した先輩や先生の話は、そうならないようにするために聞きなさい」とも言っているのと同じだ。

4は…置いておく。ただし出張に行ったら必ずお土産を買うなど「気配りを忘れない」と解釈する。

人間をタイプで分けて、当てはめてみる

でもこれは、雇われているとか、独立しているかはあまり関係がなさそうで「しっかり自分を管理できる自分を持つ人と、そうでない人」の違いを表していると考えた方がよい。

[A]1人でやっていける能力がある人で、特に介助も要らない、参謀と指揮官の両方を兼ね備えた「自己完結型」。細かい用事である経理、ひいては掃除や洗濯、炊事も、朝起きることも苦にならない。ある意味困った人で、惚れた相手がこんなヤツだと、惚れてしまった人は、取りつくスキがなくて困るであろう。

[B]1人でやっていける能力はあるが、熱中してしまうと、自己管理ができなくなる人。
病気になるかもしれないので「秘書役」を必要とする「仕事没頭型」。

[C]1人ではやっていく能力はないが、他人の助力があれば可能になるし、自分も成長していける「波乗り型」。

[D]1人でやっていく能力がないため、他人が助力するが、飲み込みが遅く成長しない「周回遅れ型」

以上4つのタイプは、同時に「人と協調性ありタイプ、協調性なしタイプ」、さらに「自尊心強タイプ」、「自尊心弱タイプ」の分類も絡んでくる。

思うに、良い意味での社畜になる人は、[C]かつ協調性ありかつ自尊心弱の人と思われる。つまり自分には備わっていないところがあるのを自覚し、人と協調してやっていけて、良い意味で「人の技を盗み」、叱られたら素直に謝り、誤りを正す、という人だ。企業側も、こういう人に辞められたら困るだろう。貢献した対価として、お給料をもらっているのだから、堂々としていればよいし、その企業も発展するだろう。勉強もしかりで、素直に伸びていくだろう。

悪い意味での社畜=会社の言いなりか、会社に反発して浮いてしまう、になる人は、[B]と、[C] + 協調性ありと、さらには [D] + 協調性なし+ 自尊心強の人かもしれない。特に協調性なし + 自尊心強の人は、[A]~[D]すべての場合で、周りとぶつかることが多くなるので、社畜を越えて、迷惑な存在になりそうだ。自分を見極めることが大切になるだろう。

このような意味合いで、学生を見ていると面白い。実際に卒業生で [C]かつ協調性ありかつ自尊心弱の人は、会社に入っても順調にキャリアを伸ばしている。

大学生の時に、運転免許を取ろうと思って、測量助手のアルバイトを1年ほどやった以外は、集団で働いた経験のない私は、「社畜」が良いのか悪いのか、それ以前に「会社に勤めること」の良い点と悪い点がよくわからないので、なんとも言えないし、そもそも「良い」「悪い」と考えることではないかもしれない。

でも、集団に貢献するのは悪いことではない。私はずっと一人で仕事をしているので、3人寄れば文殊の知恵、大勢で物事の対応を考えるのは、むしろどこか羨ましかったりする。