「失敗は失敗の元」で「成功は成功の元」だが、それを阻むものが「忘却」

「失敗は成功の元」と世によく言うが、これは勉強や学習、受験や成績アップを目指す世界では一部通用しない格言と考えている。ある程度レベルが高くなって、同時に目指す目標も高くなった人には有効だが、かなり勉強をさぼって、中間テストや期末テストでずどんと成績が落ちてしまった人には、少し可哀想な格言だ。そうではなくて「成功は成功の元」と持ってもって行く方が確実だ。
しかしその前に「忘れない」ことを実践しなければならない。

さぼっていたことが原因で、成績が悪化したなら、それを叱ったり、説教したりは必要だ。しかし感情的に怒ってはいけない。そして「次はちゃんとやるから」と約束を取り付けた後がポイントだ。

まず目に見える形での対応は、本人が「次はがんばるぞ!」と言ったときに、「では次のテストまで、その悪かったテストの問題用紙と答案用紙を、よく見える机の前に貼っておきなさい」と命令することだ。兄弟姉妹に見られたら恥ずかしいし、万が一友達に見られたら…。もっとも、恥ずかしいという気持ちを持たないようでは元々危ない。

少し乱暴なのは認めるが、百の言葉より効く。ほんの1~2か月先のことでも、気持ちが持続しない傾向があるご子弟には特に強く推奨する。ここは勝負所だ。親子で「勝負」するのは戦国時代ぐらいと思っていてはいけない。現代でも日々行われている。もちろん実行する親・保護者もいれば、しない人もいる。それは個人や家庭の自由だ。

忘れないために目に見える形にしておく

こんな乱暴なことを推奨する理由は、カエサルの言葉にもあるように、「人は嫌なことを忘れ、自分の望むことしか見たくない生き物だ」だからだ。なかったことにしたい、という心理・心情は誰にでも当方にもある。でもそのままではダメだ。

少し極端な例をあげる。
最近、広島原爆資料館への来訪者が減っている、と聞いた。ただし少しは持ち直したらしい。減っていく原因は、あまりにも悲惨なことなので「なかったことにしたい」という心情・心理が働いているのではないか、と私は考えている。

あるいは災害の歴史も同じだ。石碑に「ここに住むべからず」とあっても、それが人が通らないところにあったり、苔むして読めなくなっていたりすると、時代が下って、災害が忘れられ、忘れたころに襲われ、多数の人命が失われたのが東日本大震災だった。

この世に、これ以上ない悲惨なことでも人には、「忘れたい」力が容赦なく働く。ましてや、中学生個人の中間テストや期末テストの結果程度では、となる。

悪い結果のテスト用紙を目の前に貼ることは「忘れない」を強化する方策だ。「忘れない」だけでも、その生徒は勉強を継続するだろう。続けていれば、なんとかなるもので、必ず前よりはましな、もしかするともっと良い点数を獲得するだろう。実際そうやった人は、確かに次のテストでは改善が見らた。

すると今度は良い方を貼って残しておいて、モチベーションをさらに高める。現金な人はどこまで行っても現金だ。これこそ「忘れない」「成功は成功の元」の実践だと考えている。