英語学習は他の科目の妨げに大いになる

英語が「勉学の妨げになるかもしれないもの」とは、本末転倒と思われるが、真面目にそう思っているのだから、仕方がない。

よく言われるのは「勉強は総合力だ」であるが、これは本物の真理だ。特に中学生だった時に、国語、理科、社会の地理・歴史が苦手だったり、嫌いだったりする人は、文章の読み方・書き方、理科では身近な気候・気象や、災害などのあり方、自分が住んでいる地域の特徴、世界や日本の歴史の流れが、頭に入っていない。

冬になると太陽が余り高く上がらないとか、夏には高くなりすぎて日影が小さくなるとか、春分秋分の意味とか、夏至と冬至の違いなど、全く気にしていない。すべてテストが終わるとどこかに行ってしまう。で、受験になると「覚えていない=身についていない」ことに気が付き、慌てる。本当に、そういう人は大勢いる。教え方も良くないのだろうが、学ぶ方の意欲もあまりないことが原因で、その人が中学3年になって「あ、ウチの子、全然だめだ」と保護者が初めて気が付くこともある。高校生になっても「小学校ぐらい」の場合もある。

しかし理科や社会関連のことは見るのも嫌だ、という場合に、無理やりさせても、頭が痛くなったり、お腹をこわしたりもするので、あきらめるしかないのだろうか。でもあきらめてはいけない。ちょっとずつでもいいから、学習させることが大切だ。

英語より国数理社の方が頭脳を鍛える=賢くなる

では英語はどうだろうか。
残念ながら、英語はいくら勉強しても、いわゆる「賢く」はならない。「英語学習を主張しすぎることは、無理に『スイッチヒッター』を養成するようなもので、結局『大砲』を作り損なうことになるだろう」ということを、述べておられる英語学の大家の方が多い。これには当方も賛成だ。人の知を支えるものはやはり、その人の住む国の国語・社会・理科、そして数学であることは、恐らくずっと変わらない。

しかも今回の改定では「小学校からやっているから」の前提で話が進むので、これまた授業についていくだけで大変で、英語の勉強にものすごく時間が取られるのは間違いはない。すると他の科目に悪影響はが出るのは必然だ。そしてその英語を勉強しても「賢く」ならないのなら、何のために英語を勉強しなければならないのだろうか、とすごく疑問に思うだろう。

それにしても今回の改定を見て「VITALsが出来上がっていて良かった」と心底思っている。あれが出来上がった以上、怖いものなしだ。極端な話、VITALsの内容を理解できたなら、うちの塾は「暗記」にだけ力を注げば良いからである。どちらにしても当塾としてはいくらでも方策を思いつくので、あまり慌ててはいない。むしろ待ち受けているぐらいだ。

暗記をする・させるために塾に来てもらうこともあるだろう。本来なら家で四苦八苦して覚えてもらうのが理想だが、最近家の中があまりにも快適過ぎて無理じゃないか、と考えているからだ。昔もテレビぐらいはあったが、子供が見る番組が数も時間も限られていたし、友達と「つながる」こともほぼ学校だけで、時間を取られることはなかった。こんな、ぎすぎすした世なのに、今の子供たちは、ホントによくやっていると思う。

いよいよ変な方向に行きそうだが止めることは今のところできない

しかし日本の語学教育は、いよいよ変な方向へ進んでいくようだ。これで予算が潤沢なら、まだなんとかなるかもだが、4億円程度の強化費用〔概算要求だから、少し減るだろう)ではまさに「現場に丸投げ」だ。明治時代の4億円なら価値があるが、令和の御時で4億円は「はした金」である。

令和3年の英語強化用概算要求 の P5 第3項目 教育課程の充実 備考3 「小・中・高等学校を通じた英語教育強化と、P34のレポート、P46のパネル」 を参照してください。

しかも小・中・高全部で4億円だから、ますます小さい。旧日本軍には「合理性がない」「理知的でなく過度に精神主義に走った」などと批判が山脈分ほどあるが、彼らは彼らでお金がないから「精神」を重んじざるを得なかったのであって、その哀しさが今の教育行政に重なって見えるのは私だけだろうか?

話は元に戻る。
高校で本格的な英文解釈に入った人ならわかる話だが、英語の題材には歴史も地理も知っていることが前提で話が始まるものが多い。その時に「これどこ?」「いつの話?」では片肺運転になってしまう。もちろん下線部和訳なら日本語になっていない=国語力がないと点数はくれないだろう。

これが理由で、英語ばっかりやっていては、絶対に賢くはならない。他の科目にも力を入れるべきだが、今回の改定でどうなるのやら。ガダルカナル島の悲劇は、現場を知らない大本営陸軍部作戦課の「エリート」が引き起こしたが、全く同じことが起きるだろう。不謹慎だが「歴史は繰り返す」をライブで見れるかもと、マイナスの意味で期待している。今後の英語学習については、これからもっと発信していくつもりだが、今言ったことは本当なので心に留めておいて欲しい。

これで「勉学の妨げになるかもしれないもの」は一応終わり。
「いじめ」問題は勉学どころか、生活の妨げに、ひいては生命の危機にもなるので、改めてまとめる。