私立中学はどんな教科書を使っているのか
ここで私立中学と公立中学の数学授業の進め方について述べておきたい。ただしこれも全てに当てはまる事ではなく、あくまで私自身が見聞きしたことの範囲に留まる。詳しいことはその学校に通っている人などに尋ねるのが一番だと思う。
私立中学にも色々レベルがあるが、割合にレベルが高い学校で、多く使われている数学の教科書は、数研出版の「体系数学」と名打ったシリーズだ。同じ数研出版でも公立中学で使っているものとは全然違う。まず親しみやすさがが全くない。私が昔使っていた高校数学の教科書みたいだ。
しかしその中身は、これでもかというぐらい、考え方の基礎になる例題と練習問題を詰め込んである。例えば三角形の面積を求めるのに、垂線を下ろしてから三平方の定理をはめこんで方程式に持ち込み解く方法などもきちんと紹介してある。これは三角比を使って面積を求める公式につながる大切な考え方だ。
そして教科書に掲載されている練習問題についても全部割合に詳しい解説・解答が別冊で付いている。公立中学の教科書だと、教科書ガイドを別に買わないと、練習問題までの答えはわからない。そして教科書ガイドは値段が高い。
学校ではあまり教科書を読まない
ここで少し皮肉なことがある。公立中学で使っている教科書は、確かに良くなった。しかし多くの生徒が教科書を読んでいない。それは先生があらかじめ作ってある学習プリントを使って授業を進めるからだ。もちろんそうでない先生もいる。
学習プリントはあちこちに空欄があって、そこに書き込むようになっているものが多い。ちなみに学校授業で使う「プリント」は、英語では handout とか、printout と言うのが正しい。print だと「印刷する」という動詞になってしまう。MS DOS を使ったことがある人ならプログラムを表記する、あのコマンドか、と思うだろう。
私はプリントを使った学習が悪いとは思っていない。しかし多用するのはいかがなものか、と疑問を持っている。せっかく「この教科書はこれからの日本を担う皆さんへの期待をこめて税金によって無償で支給されています。大切に使いましょう」と書いてあるのに。
仕方ないのだろうけど
まあ確かに、公立中学は地域から、レベルに関係なく誰でも入学してくるため、まさに生徒の質はピンピンキリキリなのは事実だ。難なく授業を聞いて、難なく黒板に書いてあるものを写し取れる生徒もいれば、認知能力が元々低いとか、あるいは十分あるのだが訓練不足のため、時間がかかる生徒もいる。
「字になってない…」黒板の漢字を写せない子どもたち、意外な理由があった
それらを一緒くたにして授業を進めなければいけないのだから、「時短技」を使う必要にかられているのも理解はできる。しかしプリントは紛失する可能性も高いし、インクが乾くとか、破れるなどの危険性あるため「恒久的」ではない。ここはやはり紙質も良く保存性も高い教科書を使うのと、プリントのバランスの良い使い方をやって欲しい。
2つの合体バージョンを望む
話は戻って、多くの私立中学で使われている教科書は確かに味も素っ気もない。しかし「知らなければいけないこと」は網羅されているし、付属の問題集は、それらを踏まえて、相当数の問題を含めている。「体系数学」は初版は平成15年、その後1回改訂されているが、そんなに変化はなく、令和になってもそのままの問題を使っている。
私としては、こういうお堅い「体系数学」と公立中学で使われている「詳しい説明の教科書」の合体を望む。そうすればもっと生徒は数学の理解が進むのではないか?そして最後の問題は、どうやって勉強を続ける環境を構築できるか、にかかってくるだろう。