朝、広告を見ていたら
少し勉強とは関係ないことを書こうと思う。最近の広告に「短期賃貸滞在型のマンション」がよく掲載されているの「何だろう」と思って、検索してみた。変なことに興味を持つのが私だ。
あるサイトには「一般賃貸マンションに、家具・家電を備え、引越の費用や手間もかかりません。敷金・礼金・仲介手数料・保証金も不要。ライフラインも手続き無しで入居日から利用可能。ウィークリーマンション・マンスリーマンションは、一定期間のお住まいであれば無駄や手間を省くことができ大変便利にご利用頂けます」とある。
私にはあまり縁はなさそうだが、恐らく遊んでいる不動産の有効利用だろう。世の中変化しているなぁと感心した。人口減少はこういう所にまで影響しているのだ。実は「短期滞在型」「短期賃貸借」という言葉に反応したのは、民法に「短期賃貸借物権」という変な規定があったからだ。
以前に「短期賃貸借」という法律制度があった
2003年にこの制度は廃止された。というのは法が予定したものとは全く違ったことに使われることが多かったからだ。例えば抵当権が設定されている家が、何らかの事情で担保物件が実行されて、競売にかけられたとする。その前にその家を1年とか2年などの短期で借りる契約を結び、その競売を妨害する手段とするのだ。
これを「短期賃貸借を打つ」と業界用語で言った。名目は賃借人だが、実体は競売を妨害する「占有屋」だ。当然買い手はつかない。そこで「手打ち」で立退き料をもらうことで、金銭を得るという中々アクドイ方法で、大学の時に試験に出て「優」をもらって嬉しかった記憶がある。
私は塾の講師 兼 経営者 兼 お茶くみだが、法学部出身で、一応、行政書士の試験にも合格しているので、頭の中身にはもう一つ「法学的発想」もあるのかもしれない。ただし開業・兼業はしていない。何か資格試験に合格したかっただけ、が受験した動機だ。昔に測量のアルバイトをしていたから宅地建物取引士や不動産鑑定士にも興味があった(ただし取得には実務経験が必要)。意外に「理系」仕事でもあるし。「食は命なり」とも言うから、管理栄養士にも興味があった。
で、ここからが短期賃貸借の話。
知り合いの、金融関係に就職した人が「債権推進部」という部署に配属されたことがあった。名前はカッコイイが要するに「借金の取り立て」を担当するところだ。売掛金や借金は「回収できてナンボ」のものだから、実に大切な仕事だ。定期テストや単語・漢字テストに似ている(こーいうことを考えてしまうのが私の変なところだ)。この人は顔も声も柔和だが、中身は後に引かないタイプで、どしどし債権取り立てを進めていった。
家庭から口座を拾う一番下っ端営業時代には、各家庭を回り、その世帯主の勤め先を聞きだし、季節ごとの賞与時期をキャッチして、お金が家庭に入った次の日に「定期にしませんか」と勧誘する手段を使い、見事に年間営業エースに躍進したのを見込まれたのだ。以前、「非認知能力を自己流で解釈すると」で紹介した、非認知能力全開の人で、学生諸君はこのタイプを目指すべきだ(また始まったぞ)。
出世する人は抜け目がないのが共通点
こういう人はあっと言う間に出世する。彼は、情報には執着し、自腹を切ってまで金を惜しまないが、彼にとってお金とは金融の商品・物品に過ぎず、金離れもいい。政治家になっても政権与党の幹部にも必ずなれるタイプで、どこぞの金銭に汚い議員なんかとはえらい違いだ。
話は戻って、もちろん上司の受けもいい。新支店が開店するときには他行の客を奪う「地均し」にいつも出動している。この人が、「債権推進部」時代に、短期賃貸借を打った「占有屋」と、ある物件の中で半ば「同居」することになったことがある。相手は悪い奴だが、毎日顔を合わせているうちに、次第に打ち解けて、いつものやり方で、田舎はどこだとか、実は今母親が病気だとかを聞き出して、根が親切でもあるから、お母さんにこれをあげろとか、もうこんなことはやめろ、ヤクザはこれから下っ端にはもっとつらい稼業になるぞ、と説いた。
現在山口組が分裂してもめているのは、結局経済的な取り分の不満からで、暴対法の強化から、覚せい剤ぐらいしか収入がなくなってきたからだ、とその方面に詳しい人に聞いたことがある。彼の予想は当たっていたわけだ。占有していた男の上の者と交渉して「手打ち料」の引き下げに成功し、占有していた男はなんとか退職=組み抜けをした、と言っていたことを「短期賃貸借」の文言で思い出した。
頭脳は当然として、度胸も必要な仕事もある。きれい事だけでは世の中は渡れないだろう。特にお金が絡むとそうだ。疑似体験したかったら漫画「ナニワ金融道」を読むことをお勧めする。ちょっと絵柄が見にくくて、人によっては嫌悪感を感じるかもしれない。でも「生きた法律の話」がいっぱい出てきて、すごく勉強になる。去年から無料アプリで読めるようになった(らしい。詳しくは知らない)。
「ナニワ」の作者はもう亡くなっているが、アシスタントの人が独立して、別の原作者の下で、描いているのが「カバチタレ」で、これは行政書士の活躍を描いたものだ。最近の弁護士は仕事がない、と言うが、がめつく取りに行く人は成功する良い例でしょう。私も見習わなければいけない。「短期賃貸借」の言葉で、あの銀行員さんや、金融関係に就職した友人たちを思い出した次第だ。