脳は否定を理解できないから
入塾してくる生徒のほとんどが「M高校だけは避けたい=M高には行きたくない」という。ならもっと勉強すればいいのだが、これを口に出す人ほど勉強しないで、結局M高校となることも多い。
これは「お父さんのように(あるいはお母さんのように)は、なりたくない」と常に言っていると、結局お父さんやお母さんしか見ていないわけで、気が付けば父親や母親と同じことをしている子供になってしまうのと似ている。
脳科学者は「脳は否定を理解できない」と説明する。であるなら「ペンギンを考えるな」と言われたら、象や熊、ジャンル違いのすき焼きなどを考えれば良いのである。そうすれば少なくとも、ペンギンは考えないからだ。だから問題の高校とは別の「●●高校に行きたい」と考えるほうが確率が上がるよ、と勧めている。
本題に入る
表向きは一応「中学生対象」の塾ではあるが、私は信頼できる筋、特に卒業生のルートから頼まれて、高校生の学習指導も時々することもある。まるでウラの稼業のようだ。ただし一般募集はしていないし、急に電話をかけてこられても、高校生が対象の依頼なら断る。あまり時間もない、変な人が来て、自分にとって甘美な想い出である「私にとってのキセキの世代」の記憶を汚したくないからでもある。
そうやってこっそりと、当塾に通ってくれるM高校の生徒は、男女とも例外なく、素直で可愛い人たちばかりだ。ただし極少数なので、全体の正しい評価にはならないから、黙っているしかないのは事実だ。こういうのを「判官贔屓」とでも言うのか?ともかく、何も知らずに「M高校は嫌だ」という中学生を見て「それは偏見だし、そもそもキミは、文句や自分の希望を言えるほどの努力をしてないし、現時点で実績もないデショ」と心の中では思っている。
中1の段階で出遅れていることが多い
中学で偏差値が50以上行かなかった人は、たいていが1年生~2年生最初の時に、中学レベルの勉強の波に乗れなかったことが多い。いわゆる「中1ギャップ」に陥るわけだ。あるいは精神的に成長しなかった・幼過ぎた、あるいは家庭内で何かもめごとが起きていた、などだ。
プロ野球でも「開幕ダッシュ」に失敗すると優勝は難しい。全員が元気なうちに勝ち星を稼いでおくことが、怪我人が増え、疲れの溜まってくる夏場と終盤を乗り切れる必須要素だ。
このような人が中2の秋ぐらいから頑張っても、先行する人たちは、その中2の秋にさらに加速するから、まず追いつけない。そして中3で偏差値55~60以上に達してしまうと、勉強のコツがわかり、暗記能力も本人の精神も成長するので、またさらに加速する。勉強の面白さ=巨大なマシーンの動かし方がわかってきて、どんな本でも、時間さえかければ、内容が理解できるようになる。
教科やその人の資質によっては、中3の半ばで中学の勉強を終えてしまって、高校内容まで進むこともできる。私はそういう「修羅の道一直線」の人の存在も知っている。こんな化け物に変身した人たちに、未だに「やる気がわかない」と言っている人が追いつくことなぞ、できるわけがない。
しかし高校で「化ける」場合もある
そんなM高校や同じレベルの高校に行く人でも、学力向上の仕組み=からくりを知っている指導者に出会うと、「このままではいけない、高校ではやりなおそう」と思うのであろう。かなり努力をするようになって、それなりの大学に入る人もいる。私が見た中で、一番がんばった人は地方国立大学や、京都外国語大学、変わったところでは嵯峨美術大学に入った。
特に美術大学の英語と国語はまさに「異次元で異世界」で、かなりまいったことを覚えている。認識論を英語でやられては、たまったものではなかった。なにはともあれ、私の指導・協力はあくまできっかけで、本人の資質が開花したのだろう。遅咲きだが、いわゆる「化けた」のだ。
このような「やりなおそうとする高校生」がだいぶん打ち解けてくると、中学での自分の「いい加減さ」を告白してくれたりする。それがまた興味深く、面白い。
まだ続く。