先走り過ぎたので少し冒頭部分の解説をする

やっと気が付いたのは、自分が子供を持ったからだろう。持たなくても気が付いたかもしれないが、「擬」実感しか持てなかったと思う。

と、今まで語って来て、いきなり主題を突き付けれて困っている人もいるかもしれない。ここで少し落ち着いて、ごく簡単に発端を説明する。

地中海を仕事場とする船乗りで、一等航海士の純真な青年 エドモン・ダンテス 当時20才は、メルセデスという少女との結婚を間近にひかえていたが、ある時、船主の知り合いに頼まれて、荷物と書状をある軍人に渡す役目を終えて、港町マルセイユに帰港する。

後色々あるが省略して、嘘で塗り固まれた卑劣な「密告」がなされ、エドモン・ダンテスは結婚式の最中に逮捕され、まさに自分の妻となりかかっていたメルセデスと引き離され、予備監獄とも言うべきイフ要塞に中に閉じ込められてしまう。実はこの「イフ要塞」は実在する「シャトー・ディフ」のことで、当時の発音が表記しにくかったから「イフ」にしたと思われる。

中央の島がシャトーディフだ。本当にマルセイユの沖合の目と鼻の先に存在し、ミラボーなども収監されていた歴史的事実もあり、割合風光明媚なため、今は観光名所になっている。まるでダンジョン!フランス、イフ城の知られざる歴史と絶景 から掲載しました。いつか行ってみたい!

密告には裏があって名探偵登場

密告程度で、有無を言わさず収監するとは、19世紀のフランスでもかなり野蛮な話だが、不運・不幸なことがたくさん重なっていたことが、次第に明らかになり、絶望していたエドモン・ダンテスは復讐の鬼になることを決心する。今簡単に「明らかになり」と述べたが、手紙すら届かないイフ要塞の中に閉じ込められた彼が、自分が陥れらた理由を知ることができた原因は、近所の独房にこれまた無実の罪で囚われていたファリア司祭と、知り合いになったからだ。

ファリア司祭は脱獄しようとしてトンネルを掘っていたのだが、ちょっとした計算ミスで方向を間違えてしまい、エドモン・ダンテスの独房にたどり着いてしまったのである。彼らは親子あるいは祖父と孫ぐらいに年令が離れていたが、すぐに親友になった。そのファリア司祭が切れ者で、エドモン・ダンテスの冤罪になった原因をすべて解き明かしてくれたのである。

しかし復讐するにしてもまずは自由にならないといけないし、先立つもの=お金も必要だ。2人は脱獄の計画を練ると同時に、ファリア司祭はエドモン・ダンテスに教育を施す。なんと司祭はこの世の教育に必要と思われる150冊の本をすべて暗記していたので、それをすべてダンテスに教え込んだ。そして語学もだ。航海の知識は豊富だが、純朴だったエドモン・ダンテスは獄中で中身は紳士へと成長する。

まるで映画か、RPGの世界みたいで、オープニングではいきなり結婚式場から逮捕され連行されるという「爆発」が起きて、観客は引き込まれ、「転生」した世界では、孤立した島に閉じ込められたパーティーが基礎のサバイバル知識を教え込まれていくような展開が続く。もちろん時の流れを考えれば逆だ。現代の小説や映画、ゲームがまねているわけだ。だから古典を読みなさい、と進言しているのである。

また少し続く。