気の毒に思うので、嫌だけど忠告する

私はあまりにも「無軌道な字体」を書いている人が塾生になった時は、頃合いを見計らって、以下のように忠告することにしている。もちろんそれまである程度の信頼関係を築いていることが前提だ。しかし本来なら、もっとたくさんの時間をともに過ごしている親・保護者の方や、学校の先生などがするべきことではないか、といつも疑問を感じながら、だ。

「絵や音楽で他人と意思を表現できる人はいるが、それは少数だ。さらにその中で超天才と言える人、音楽家のモーツァルト、画家のダ・ビンチや尾形光琳、書家では良寛和尚のような人は死んでしまっても、人に自分の意思を伝えることができる、いわば別格だ」

「だが大部分の人は言葉で他人と意思をやり取りする。そしてそれを紙に書いた時、字と呼ばれるものになって、他人と意思をやり取りする道具になる。つまり字があなたと別の世界をつなげる接点になるわけです」

「そして『字』があなたの意思を表している。でもそれが何を書いているのかわからない時は、極端な話、字の印象だけであなたの人格を判断してしまうかもしれない。薄過ぎたり、細過ぎる字を書く人は『影や意志の薄い細い人だ』と思われ、形が揃わない字を書く人は『心のコントロールのできない不安定な人で、もしかすると狂っているのかもしれない』と思われるだろう。実際精神的に不健康な状態にあるかどうか判定する筆跡学という学問もある。書道展に行って、見事な書体を見て感動するのとは、逆の感情が生まれてしまうのだ」

利害関係者だから忠告する

「そして困ったことに、多くの他人は『利害関係者』ではないから、仮にあなたの字を見て、そう思っていても、あなたにわざわざ『私はこう思っていますよ』とは告げてくれない。学校の友達も先生も、残念ながらそんなに深い利害関係者』ではない」

「友達も一生付き合うこともまずないだろうし、学校の先生はほとんどが1年限りのお付き合いだ。あなたのことを『めんどうな奴』と思っていても、まず口には出さないだろう。あなただって『めんどうな奴』にわざわざ関わろうとはしないとの同じだ」

「つまり今まであなたは、そのような印象を、言いかえれば、私はこーいう者ですという『名刺』を相手に渡していたことになる。しかし私はあなたと『利害関係者』になってしまった(残念ながら、という言葉はなるべく避けたい)。あなたができるようになれば、私は得をするし、できないまま=点数の取れないままでは損をする。そして最大の利害関係者は、あなたの保護者です。あなたの行動は保護者に損害を与え、顔に泥を塗っているのと等しい。そこであえて言いますが、このままでいいのですか」

すこしきついが、こんな言い方をして、相手が納得してくれたら、「もちかた君」などの字体矯正器具などを購入して、なるべく半年ぐらいで改善に向かうようにしていくし、もちろん空間図形の描き方も指導している。

最近は問題解法の指導もだが、こんなことまでやることもある。まるで生活指導の先生みたいだが、これも精神的成長の一つだろうな~と思っている。学校の先生も、オバカな生徒が多いだろうが、頑張って欲しいものだ。