中学レベルはできないと困る

英会話を習っているが英語のテストの成績は良くない、という人が最近多い。時々、来塾・相談もされる。

ここで注意する点は、大学進学と違って、高校進学はたいてい、5科目すべての勝負だ、ということ。できる限り不得意科目をケアし、大きな苦手をできる限り減らし、バランスよくすることが必要だ。

本音を言えば「中学レベルのことはできるようになって当然」という暗黙の了解も大学の推薦入試拡大とともに、大きくなってきている。もちろん渦中にいる中学生にとっては「御代官様、そんなご無体な」と言いたい気持ちはよくわかる。でも本当の事だ。高校に行けば実感するはずだ。

バランスよく勉強する、勉強しなければならない、そのためにはバランスの良い環境を構築する必要がある、よって結論として早期の英語力確立が「大戦略」で、これ損なうと、後にチマチマ修正しても取り返しがつかない。

点数が取れない理由はたぶん2つ

それであらかじめリスニングや苦手意識をなくすために、英会話教室などに通う人がいる。これはこれで良いこととは思う。しかしなぜ点数が良くないのだろうか?

考えられる原因の1つは「正確に覚えて書けるまでの訓練が不足している」だ。

ある言葉を話したり書いたりすることに、日本語も英語も中国語もない。もちろん聞き取りもだ。さらにある考えを持ったとしても、それを口に出したり、書いたりするためには訓練が必要だ。そして日々鍛錬しなければ、すぐに錆びついてしまう。

不代名詞の英短文に「To know is one things, to do is another.=知っていることと、行うことは全く違う」がある。まさにその通りで、思う・考える→自分の意見を言う→自分の意見を書くは、全然違うもので、相互に影響してはいるが、中々連携が思い通りにいかない時があるし、友達と気軽に話す時と、尊敬する大人と話す時は、そもそも言葉使いが違うから、TPOまでを考慮することも必要になる。

書いていないから、書いても覚えていないから

書くことでも同じで、日記に自分勝手に書くときと、作文や小論文として書くときはやはり使う言葉が違ってくる。その違いをマスターするためには練習あるのみだ。そして英単語や熟語、英短文の例文を、少ないのは仕方がないとして、どれだけ正確に覚えているかが、分かれ目になる。

よって、いくら英会話だけを練習しても、学校の英語のテストでは正確に書けるかどうか?を問われるから、それに向けて書く練習をしなければ、点数は取れるはずがない。「わかっていたのに~」というレベルは all or nothing で、「わかっていない」のと同じだな、オレは(あるいは私は)まだダメだな、と認識するしかない。

ネイティブスピーカーの「当たり前」は、我々には当たり前ではない

原因の2つめが、ネイティブ・スピーカはネイティブであるがゆえに、「日本人がなぜわからないか」がわかっていない、そしてわかっていないから指摘ができない、可能性が大きいことだ。

これは数学の先生が、数学のできない人のできないところにピンとこないのと、似ている。数学の先生は数学が好きだから数学の先生になれたのであり、できない人=発想が身につかない人のことは、頭では理解できても、心では理解できないのである。

英語のできない人に一番最初に共通していることは、英語は「主語→述語→目的語」の順番に並べないと、いくら単語が正確に書けていても、点数は全く取れない、という大原則をはずしていることだ。また「名詞+前置詞+名詞」を見たら、後ろの前置詞+名詞は「小さな形容詞」だと思え、も身についていない。だから整序問題で失敗する(ただし倒置文は除く)。

この順番に並べることを、ネイティブ・スピーカーは、それこそ細胞レベルでわかっているから、日本人スピーカーがそこを間違うことに理解できない傾向があるようだ。中にはそこまで指導できるネイティブスピーカーもいるかもしれないが、もし指導できない人に当たったら、何年やっても英語力は上がらないだろうし、もちろんテストでも点数は取れないだろう。

私自身は、中学の時、英語は面倒だと思っていた

単語や熟語を覚えたり、英作文に役立つ基本英短文を覚えたり書いたりするのがとても面倒だったからだ。そして間違えても、どこが間違っているのかわからないので、イライラした。その点数学は答が合わなければ、どこかで考え違いや、計算ミスをしているに決まっているのだから、それを探せばいいので、数学は好きだった。

あるいはもっと根本的に、日本語ができていない可能性も視野に入れたほうがいい。日本語文を見て、読んで、その言いたい部分を正確に把握して、意味の通る英文を作れ、などの問題が、即座にできるようにするのはかなり高度な能力を必要とする。

英語ができる人は、今あげた2つの原因をクリアしているから、「何を悩んでいるのか。そんなこと当たり前じゃないか」と思うだろう。それは「数学ができて数学の先生になったが、生徒のわからないところがわからない先生」と同じである。わかっていない人は、根本的なことが案外わかっていないし、界隈でしょっちゅう起きていることだということをわかってやって欲しい、と切に願う。