プロスポーツでは人生がかかっている

私は特に応援するスポーツも、スポーツチームも存在しないので、当然応援する選手もいない。何千万円もの収入を得ていたり、得ていなくても、自分の好きなことをやれる人生を過ごしている人たちを、私程度が応援する必要を感じないからだ。けがをしないで頑張ってください、とだけ思っている。

しかしスポーツがらみの話は大好物だ。数十年前に、坂東英二さんかもしれないし、江本さんだったかもしれないし、書名も忘れてしまったが、プロ野球界の暴露本が出た。それを人にもらって読み、その中のある一節に感嘆したことを覚えている。

ある年に、中日ドラゴンズと読売巨人軍がペナント終盤で優勝争いをしていた。その正念場の残り10試合で、中日ベンチで行われていたのが、ヒットを打ったり、ファインプレーをしたり、三振を取った選手に「よくやった!」とポンと現金を渡すことだった、と書いてあった(と思う)。

これほど効果のある「励まし」はなく、中日の選手はそれこそ目の色を変えて、打ち、投げ、守りぬいて、とうとう長い間、覇を唱えていた読売巨人軍を下し、セ・リーグ優勝を成し遂げたのだ。「プロ野球は勝って、打って、アウトを取って、優勝してナンボのもの」を具現化する効率の良い方法を採用したわけだ。

皮肉な意味では全くなく、大したもんだ、これこそプロ魂だな、と感銘を受けた。選手生命は短い。数年の間にお金をできるだけ儲けて、第2の人生に備えなければならないし、妻子も養わなければいけない。勝てない球団は身売りの結末しかない。お互いに大変なことをやっているのだから、きれい事は通用しない世界だ。

プロだからこそ

相撲では「土俵には銭が埋まっている」と誰だか忘れたが言い残した。漫画で「グラ銭」というのがある。彼らは勝ち星をあげたり、ヒットを打ったり、三振を取ったりすることでお金を得ている。普通はそれがシーズン終了後に監査されるわけだが、この場合は、まさに目の前で監査を受けるわけで、公平で良い。巨人軍は変に紳士だったから、当時の野武士集団の中日に負けたのかもしれない。

航空兵力の傭兵部隊を描いた「エリア88」も同じで、戦闘機を1機撃墜すれば何万ドル、戦車を破壊すれば何千ドル、戦闘に勝てばボーナスを弾むとかで、傭兵を雇う中東の国 アスランが舞台だった。日々進歩する戦闘機の訓練を空軍に課すより、その手の事に長けている経験者=傭兵を雇った方が結局は安上がりだし、傭兵だから戦死しても年金を払う必要はない、という理由だ。ちょっと物騒な話だ。

物騒でない例では、アメリカのプロゴルファーがここ一番に強いのは、子供の時から「このホールでパパに勝ったら10ドルあげる」とか、連れてきてくれたおじさんたちが、パット前に、カップの後ろに50セントのコインを積んで「入れたらあげるよ」とけし掛けることに、慣れているからだ、とも聞いた。

ただし賭博には賛成できない。賭博は犯罪になっているし、そもそも自分の金儲けの基盤である、野球と言うスポーツを、賭けの材料にするのは、自家撞着もはなはだしく、矛盾しているからだ。

賭けるべきは自分の人生の運ではないか?

実はまだ続く。