就活対応の漫画だが十分使える内容だったので

今までにあげた漫画は2000年に発表された「気まぐれコンセプト」というもので、ビッグコミックスピリッツで長期連載されている。そのなかの2000年ミレニアムバージョンというシリーズで、結構好評を博した。

就活話題なら、いくらでも他にあるのに、なぜ20年以上も前のものをわざわざ取り上げてきたのか?
就活が様変わりしたのは1996年ぐらいに「ネットエントリー制」が取り入れられてからだ、とされているし、この漫画の中でもそう紹介されている。

そして「自動読み取りソフト」の充実が図られたのもそのあたりだ。郵便局に行けば振込用紙に手書きで記入したものを挟めば、すごくひどい字体でない限り、読み取ってくれる機械が置いてあるはずだが、企業はあれの大型を導入して、ESと呼ばれる「エントリーシート」つまり履歴書を求職応募者に書かせて、それをコンピューター処理するようになった。

そのESには「小論文」が課せられるのが「標準」になった。題目も使い回しのきかないものが多くなって、もし30社受ける求職希望者なら、30本の小論文を、書かなければいけなくなったのである。これは今でもそのまま続いている。

日本は企業が引っ張っているのは揺るがせない事実

企業にとっては「人材こそすべて」だから、優秀な人材が色々な場所からたくさん欲しい。ネットでの応募は、企業のニーズにも答えたものだったと言える。

もし大きな失敗を2回ぐらいすると、かなり大きな企業でもあっと言う間に潰れて、他の企業に吸収されてしまう例は、2000年6月に起きた雪印乳業食中毒事件の例などでも明らかだ。

最近だと東芝かもしれない。あれだけ国民が「原発はやめておけ」と震災後に意見したのにもかかわらず、「巨大公共事業」みたいに進むのをやめなかったばかりに今、倒産の危機に直面している。すごいアホだとしか言いようがない。あの時「原発事業はまだまだイケル」と言った評論家は、今どんな顔をしているのだろうか。

同時に企業は時代のニーズ応じて変化することも必要だが、危険を承知しながらも前にも進まなければならない。ホンダの創業者である故・本田宗一郎は「1%の不良品率であっても、その1%を買ってしまったお客にとっては、それがすべて」との名言を残した。

でも2014年12月に起きた「インスタント焼きそば ペヤング ゴキブリ混入事件」は専門家などが計算すると0.00025%の確率だった。

それでも雪印乳業など「クレーム対策」に失敗した企業の二の舞にならないように、今失う損失と、未来に会社消滅の危険性の事態を天秤にかけて、「全品回収・生産中止・製造過程見直し」の大鉈をふるって生き残った「まるか食品(本社・群馬県伊勢崎市)」の勝利とも言える。

しかも「混入ルートは特定できなかった」との発表までしている。これはただの正直ではなく「将来やっぱり起きる可能性は否定できないです。もし起きて、大ごとになったらまた全品回収して、さらなる施設改善に努めます」と宣言したことに等しい、図太いぐらいの勇気ある行動と言える。

教育行政の側から動いたのではない

そしてこのあたりから、高校入試も「特別選抜」「小論文・面接」などの「特殊選考方式」を取り入れるようになった。「新学力観」の矛盾が噴き出てきた頃でもある。変化する社会情勢を踏まえた企業の要請を、教育界も無視できなくなった、と私は睨んでいる。つまり決して教育界が自発的に「自己改革」に乗り出したのではない。わいわい言われて、重い腰をよっこらせと、上げた印象がある。時代を先取りする能力は現代日本の教育行政に一番欠けているものだからだ。

まだ続く。