「英文中の単語の正しい並び方」が習得できない人が増えていくだろう

前記事で、「2種類の文のどちらでも、その後に『様子・場所・時間』の順番で『副詞的なものを並べておく』が身についていない。整序問題をやらせてみれば日本語の順番で書くだろう…この時点で半数がギブアップし、「三人称単数単数現在形」が登場するのがここから…」と書いた。

新課程に比べるとまだ「学習進度」が遅かった、今までの「普通の」カリキュラムでも、起きていた事象だった。しかし今回の新課程の英語では、単語も多いし、進みも早いしで、ますます「英文中の単語の正しい並び方」が身についていない人が増えていくだろう。あからさまに言えば「英語で点数が取れない人数が増加」することを意味する。

これは英語を学習する生徒たちが作る「社会」の中間層=普通を含むすぐ上と下の層の人たちが、伸び悩むことを意味する。中間層に活気がない社会はいずれ、社会全体の動きが停滞するか、まずくすると崩壊する。「盛者必衰の理」はどこでも当てはまり、今、自分がたまたま上層にいたとしても、いつ下落するのかわからないのも事実で、そうなった時に、救済するシステムを持っていない社会機構は、構成員の忠誠心を獲得することは難しい。

2013年の英検合格者の中学と高校の差があまりにも激しいのは、中学レベルで中間層が何とかなっていても、基礎が弱いから、高校レベルでは伸び悩む⇒不合格になるか、受験そのものを拒否することを端的に表していると考えたほうが良い。

また英検の試験形式はほぼ選択問題なので、仮に単語を間違えて覚えていても、得点が可能だという「弱点」も忘れてはならない。もっと正誤問題を単語レベルから取り入れたら、例えば「ギターのつづりで正しいのは guiter guitar guitor gitar のどれですか」「次の英文で間違えている文はどれですか」などをたくさん取り入れたら、多くの人が不合格になるかもしれない。

英語エリートが作ったのに、かえって皆に拒否されそうだ

どんな時代にも、英語がよくできる人は一定数存在し、残念ながらいくら頑張ってもできない人も一定数存在する。数学や国語でも同じで、これは前提事項だ。それでも中間層はやり方のコツがわかってきたら、意外に伸びていくことも経験的にわかっている。しかし残念なことに学校の先生の指導によるものではなく、塾とか家庭教師などの指導による場合が多い。「最近頑張っているな」と学校の担当教師に褒められた生徒が、「あの先生、何か勘違いしている」と陰でささやいていることは、ものすごく多い。

学校での「救済策」が充実していない現在の時点で、このような「理想を追ったカリキュラム」を組み込むことはあまりにも危険度が高すぎる。制空権の確保もなく、補給部隊の当てもなく、火力の弱い軍隊が、突撃するようなものだ。全滅を避けることは恐らくできない。

複数の扱いもひどい

まだまだ新課程の教科書には弱点が多い。次は複数形の扱いがあまりにも雑なことだ。名詞を複数形に変えること自体はそう難しいものではない。そんなレベルではなく、複数形の文中での使い方に詳しい説明がほぼないことが、大きな弱点だ。

複数形の使い方なんて難しいものではない、というのは普通よりかなり上の人の話で、普通か、すぐ下の人にとっては、名詞を複数形に変えるだけで精一杯で、その使い方の注意点にまで、気が回らない。そして「主語が複数で be動詞を使う場合は、例外なく are を使う」という大原則も恐らく身に付かない。

またThese , Those の使い方や、some , any の使い分けも詳しく説明は特にないし、急に any から始まったりする、この無神経さは、作っていて、恥ずかしくなかったのだろうか、とずっと疑問に思っている。

英語が得意な人=英語エリートがこの教科書を作ったはずだ。しかし多くの人を英語学習の世界に誘うためにやったことが、かえって拒否される結果になることが予想される。少し原義からは逸れるが「貴人情を知らず」ということわざが当てはまりそうだ。