本を読む人が減ったことで文法力も落ちている

で、偉そうに言うおまえはどうなんだ、と質問されたとする。実は私自身も、高校生の時に参考書を渡されたが、日本史やら数学ほどには、あまり熱心には読まなかった。しかし2年も終わりになるとさすがに「この不確かな記憶ではまずい」と思い、毎日10ページ読み返し、章末の問題はすべてやり直すことにした。するとテストも点数が取れるようになるし、授業でも理解がより深く、つまり先生の言う「細かいこと」がわかるようになってきた。気がつけば、いつも読むようになってきたのである。

結局は「欲」であり「希望」であり、そこに「価値」を見出したからだ。英語が全然話せなくて困った人が、日本から届いた英文法参考書を読み込んで、実際の英語と日本語で書いてある参考書の解説を結びつけてできたのが「ビッグ・ファット・キャットの世界」と私は認識している。著者も英語を理解したかったかったからだ。

これも「欲」であり「希望」で、「価値」を見出した例だろう。

著者は前書きの部分で正直に「日本からの荷物に入っていた英文法参考書を何回も読んだ」とある。この点に、ものすごく共感を覚えた。多くの人はこの部分を無視して、楽に英語を話せるようになりたい、わかりたい、と思っているのではないか?

試験は避けて通れないし、高校生になったら結局は文法用語は必要になる

ただ私自身は生来、読書は苦ではなかった。幼いころから面倒を見ていてくれた祖母が「とにかく本を読みなさい」と言うし、父も「本なら買ってやる」と言ってくれた。読んでいる最中の「監視役」である黒猫もいた。また小学校の図書室担当の先生も優先的に扱ってくれたこともあって、気が付けば、本を読むことが自分の一部になり、「本を読まない」という人がこの世にいるのが信じられなかったぐらいだった。この点は本当に感謝している。しかしこれは私個人の話で、一般的ではない。

今、現在の中学生で「本好き」という人は、ダジャレではなくホントに少ない。そこで勉強することで、少し長い日本文も読んでもらおう、でもイラストもないと全く読めないだろう、幼児が絵本を見るような感覚でできないか?という意図もこめて、VITALs を作ってきた。

でも、試験は避けて通れないから、文法用語の紹介もした。そこが少しつらかった。高校生になったら、スタディーサプリを使っていても、最終的には、FOREST あるいは EVERGREEN などを読み、Prestage などに取り掛かることになるだろう。つまり「点数を上げる」という現実を避けることはできないからだ。なんとかそれにきっかけにならないか、と思っている。

「前置詞の後に動名詞を使う」をもっと大きく取り上げて欲しかった

VITALs の紹介に加えて、New Crown の感想を述べているのだが、また発見があった。最近の中学英語では「前置詞の後は動名詞」のルールを教えずに、サラリと忍び込んでいることが多い。しかし2016年に「前置詞の後ろは動名詞」はようやっとTotal English 2 で、セクション内の重要文として、大きく紹介された。大変喜ばしいことだった。だが今回の New Crown でそうではなく、本文中に書いてあるだけ、章末の文法説明にもない。やはりまた一歩後退かもしれない。ちょっと残念だった。他の教科書ではどうなのだろうか。