ノートの使用や買い方、分類一つにも、精神的成長がある

男子生徒はこの点でも特に進化が遅い。いつまでたっても同じノート、同じ色、同じ店のものを2年も3年も買って使っているので、時々区別がつかなくなって混乱していることも多い。自分のノートも区別できないなど、お猿もびっくりである。また同じ型のノートを使い続けるのなら、何か工夫をしなければいけないのだが、工夫がまったくない人ほど、成績がイマイチ上がらない。

例えばノートに番号を書くとか、シールを貼るとかすればよいのに、面倒なのか、そういうこともしない。例えば、英語は3種類のノート使用方法がある。

Aノートは、単純に単語や例文などの暗記をするために書くノート。これは使い捨てかもしれない。レポート用紙でも十分だ。

Bノートは、文法などの説明を筆写したり、付属した問題を解くためのノート。これはかなり大切で、貴重品とも言える。

Cノートは、教科書の内容を写して、その和訳を書いたりするためのノート。これも貴重品だ。

Dノートは市販の問題集の解答を一旦書いておくノート。ある方が良いし、向学心にあふれ、同時に慎重な人なら持っている。ルーズリーフでも十分だから、Aと兼用できる。

合計で4冊のノートを並行・同時使用

中学校でとりあえず、英語の成績を上げたければ、大体以下のように使う。おそらく住んでいる地域が違っても、そんなに変化はないはずだ。ただし「単純に点数を上げる方法」であって、「コミュニケーション・ツールとして英語を使えるようになる」とか、「国際人の育成のための英語プロジェクト」からの方法論ではない、と最初にお断りしておく。
「今、目の前にある危機 clear and present danger / crisis before the now eye」の回避方法に過ぎない。

①まずは教科書の単元で出てくる単語を調べ、同時に文法内容を習う。次に教科書の英文を和訳して、音読して意味をつかむ。その際にメモを取ったり和訳を書くのにCノートを使う。

②ただ和訳を書いているだけでは全然テストでは通用しないから、Aノートに単語を覚えるまで書いて、発音して、音を聴いて、自主テストを繰り返す。そして次は教科書の英文を、やはり覚えて書けるまで練習する。だからAノートは消耗度が激しい。

③Bノートは自主的な勉強のために買ったシグマベストシリーズなどの「くわしい英文法」を読んだり、例題などを解答した時に書くために使う。あるいは塾とかのテキストのために使う。

④学校で配布され、提出が義務付けられている教科書準拠の問題集の範囲を終わった後に、市販の教科書準拠の問題集 新興出版の「教科書トレーニング」などを買ってさらにそれを学習するのに、Dノートを使う。

⑤ ①~④の作業をすべて終了し、なおかつ時間とエネルギーがあるなら、旺文社とかゼット会などの問題集も解くかもしれない。そうなると5冊目のEノートも必要になる。

大体以上の流れが一般的で、個人差はあるだろうが、
①ができて30点~50点代、
②ができて60代、
③ができて70点代、
④で80点代、
⑤で90点~満点になる。

順序を間違えると、あまり定期テストの点数は上がらない。特に、一番めんどくさくて、たいていの人が嫌がる②の作業で、教科書の単語や英文を覚えていない=書けない人は、いくら⑤までやっても、点数が上がる可能性は低い。塾がやたらスピードがあって、塾の宿題が豊富に出されるところでも、この弊害に陥る傾向が強い。逆に「覚えていて書ける」なら、なんとかなる。英検でも2級ぐらいまでなら「単語力と熟語力=語彙力」で粉砕できるのと同じだ。

30点を60点に上げるのと、60点を90点に上げるのは別次元の話

こんなに頑張っても、60点からは10点ずつしか上がらないのか! と怒ったり、がっかりしないで欲しい。30点を60点にするのと、60点を90点にするのは、レベルも次元も全然違う「30点上げ」だ。

スポーツで言えば、1回戦突破だけでいいのか。それとも4、5回戦突破→決勝リーグ進出を目指すのか、の差みたいなもので、レベルが上がれば上がるほど、ミスをした方が負け=細かい戦いになるのが当然だ。雑なやり方で勝ち上がれる、と考える方がよっぽど変だ。

このような細かい技を自分で工夫して使っている人なら、70点で止まることはまずなくて、次第に、気が付いたら90点代に乗っていたりするから、見ていても安心だ。それなのに、これらの作業を1冊のノートで済ませる「すごい」人には、明るい未来はまずやって来ない。

単語の練習も、教科書の和訳も、問題集を解くのも、すべて1冊でやっているから、当然ノートの内部はぐちゃぐちゃで、どこに何が書いてあるのか、自分でもわからなくなっているし、そのうえノートの消耗率も激しいから、すぐにノートが入れ替わって、古いノートが必要になったときに手元にない、という喜劇=悲劇が起きる。

こちらも指導はする。しかしこういう点に気が付かないで、子弟の雑なノート使用を放置する保護者はいかがなものだろう。それぐらい自分で気が付いて欲しい、と思う=期待する保護者の心はわかるが、気が付かない子供は気が付かない。そうならしっかり干渉しないといけない。子供の自主性を待っていたら、始まらないからだ。もしかすると遺伝なのかもしれない。隔世遺伝ならまだ良いが、親と子供が同時に気が付かない人たちだと中々大変だ。

ぜひ一度、ご子弟のノートの使用方法を点検することをお薦めする。
この雑文を書いている今、中学1年生はそろそろ授業が始まる。中学2年生や3年生は始まっている。遅くてもやらないよりは、ましだ。

そしてここが肝心なのだが、めちゃくちゃな使い方をしている場合に、保護者がキィーッとなって頭に血が上り、いきなり修正しようとすると逆効果になる。そのように放置した、ご自分の責任を忘れてはいけない。

その場では「どうしたらいいかね~」とでもごまかしておき、後日ネットなどで流れている「収納上手の人たち」の技を色々探して、良いのがあったら、子供といっしょに見ることだ。案外、ポーチを使った収納術なども参考になる。その時に「ノートの使い分け」をすべりこませるのが自然で良いだろう。