「あまり学校に期待しない方が良い」の具体的例

今回の記事は「精神的成長」とはあまり関係がない。それでも一応書いておきたいので、書いておく。

前回の終わりに「あまり学校に期待しない方が良い」と忠告した。その良い例になるか、悪い例になるか不明だが、少し前に、とある私立校の校長(辞めたから元校長)が「不正経理」を行って裏金をプールし、それを各方面にばらまいたことを追及された事件があった。そこはスポーツでも有名で、学業面でもめきめきと頭角を現していて、あと一息で「一流」だった。

よくある話だから、それ自体には興味はなかったが、あれ?と思ったのは、裏金の一部が進学塾関係者への接待に使われていたと第三者委員会の報告を見てからだ。「~と言われている」の記事だったが、恐らくその通りなのだろう。あの時、がらにもなく、新聞や雑誌の記事を熱心に追った記憶がある。

マネーロンダリングという手口

塾関係者に「直接」ではなくその奥さんや親族に、さらに巧妙なのは金銭ではなく「物品を届ける」ことまで念を入れていたと報じた記事をよく覚えている。高級ブランドのバッグなどはそのまま使っても良いし、新品のまま引き取り業者に持ち込めば現金に換金できる。世間一般の常識では「いけないこと」だが、刑法では贈収賄罪は公務員が対象なので、この場合は成立しない局面だ(商法だとちょっとやばい)。

「ほぉ~」と感心もした。政界のマネーロンダリングの手法によく似ていたからだ。選挙当選者に個人的な「お祝い」の名目で「絵画」を贈る⇒意識してその議員が興味を持てない絵画にする⇒秘書が業者を呼ぶ⇒業者が意識的に相場以上の高価で買い取り秘書≒議員に渡す⇒差額は絵画の贈り主が負担する、という手法だ。美術品などの「相場」はあってないのと等しいから、「闇」に隠れて追及しにくい。

この「事件」が起きた原因は2つある

スポーツなら中学の大会などに注目していれば、有望選手はすぐにわかる。しかし学業において優秀な生徒を探すのは難しい。学校には守秘義務があるし、模擬の成績を教えてくれる予備校はまずないだろう。そこで優秀な生徒が集まっている進学塾に直接に目を付けたことが1つ。

もう1つは、学校の指導より、進学塾の学習指導の方が信用できることだ。
高レベルの進学塾なら、計算問題などでも正解が出るまで、しつこく「注意」し、「反復」させているから、基礎学力に安定・信頼感があるし、その進学塾の高レベルのクラスに在籍できているだけで、その生徒の学力は「本物」と「保証」される。

また高いレベルの塾関係者に「あの学校は良いよ」と言われれば、塾生はその気になるし、結構高い指導料を払って塾に続けて通っていることは、家庭の学習資金は豊富安定、と判断されるだろう。学校では特待生で入れるとなれば、家庭側も嬉しい。さらには塾側でその高校の授業対策コースを用意したり、その高校に塾から補習講師を派遣するなど「アフターサービス」を徹底することもある。これも別の、とある有名進学高校対応の「補習塾」では、その高校のOBが定期テスト対策の補習授業を受け持っていて「●●先生はこの手の問題が好きだ」「△△先生は次にこれを出すだろう」とかの情報と予想を実施している。

似たことはどこでもしている

なんだかなぁと思われるかもしれないが、規模は小さいが当塾も似たようなことを英検対策でやっている。学校は「英検を受けろ」と指示するが、その対策はほとんど取ってくれず(アリバイ的に2回ぐらいは、直前に過去問だけは解いたりする)、生徒に丸投げだ。仕方がないから、親・保護者の方たちは自腹を切ってうちなどの塾に依頼してくる。こちらは情報を集め、対策授業を組み、二次対策も徹底して行い、合格したとする。すると学校は「うちの生徒は皆努力家でして」と、その合格実績を自分の「手柄」にする。積極的に真実を告げていないだけで、確かに嘘は言っていない、という図式だ

ここまで来ると、「英検コース」と名打って3か月間に週に2回ぐらいは授業を組んでいるのならともかく、そうでない学校での学習指導は「形」だけだ、と見抜かれている。これは昔の「幕府と天皇」みたいなもので、塾が幕府=実力機関で、学校側は天皇=形式に認定するだけの機関と見なされている、と言っても良い。

少し弁護すると

元校長さんのことを少し弁護させてもらえば、創業者としてやはり、学校の未来をもう一つ上に、何がなんでも切り開きたかったのだと思う。だから社会通念上ではアウトでも、法律的にはセーフだし、強引な手法・ワンマン経営に眉を顰める周辺関係者がいたとしても、「誰も損をしていない」から良いじゃないかと踏み切ったのだろう。企業の創業者はたいてい「叩けば埃の出る」ような人生を送っていることが多いし、きれい事では尖れないのは歴史の示すところだからだ。現に今その学校は、東大・京大・阪大・神戸大の合格者の合計は100人以上もいる「一流私立」になった。元校長さんの「無理無茶」は学業面でも実った、と言ってもよい。

ちっぽけな当塾でも、毎年、たくさん私学進路説明会の案内が入るし、以前知り合い(でしかもその子供が塾生だった人、つまり私の大切な塾支持者)が私立高校の役員をしている義理で、一回だけ説明会に顔を出しただけなのに、それから季節ごとに進路担当部長さんが挨拶にくるぐらいだ。まあただの定時連絡だろうけど。

もし生徒を斡旋したら、一段上の待遇になってしまうだろう。世間の常識ぎりぎりのラインかもしれないが、これ以上は近寄りたくない。青臭いと思われるだろうが、十分他人の人生に介入しているうえに、その方向まで、しかも未成年者の方向を、私みたいなハンパ者が決めるのは僭越だ、と考えている。現状修復だけでよい。

幸いウチは公立高校志願者がほとんどだから、上の記事のようなことは今後もないと思う。ただこういう現状、学校経営側も塾関係者も結構生き残りに必死であること、そしてその原因は何かということを、親・保護者の方々に考えていただきたくて、少し推測が多いが、この記事を書いた。