成功するのは30%ぐらいと心得る

志望する中学に合格できなかったとか、受験が事情があってできなかった場合は本当に不運で気の毒だ。あるいは算数のできない問題が気になってしかたがない場合もあるだろう。
色々な生徒を見てきたから言えることだが、あれだけ算数を勉強したのに、「うまい結果が出なかった」ために、その悔しさが決着していない、というのはわかるような気がする。

この年齢になれば、普通の人間の人生なんて良くて30%ぐらいしか「うまく行く」ことはないのがわかっている。ちなみに中学受験専門の塾でも、第1志望校に合格する人はやはり30%ぐらいだから数字的にはあっている。

でも12才ぐらいでは中々実感できないだろう。しかし現実から逃避するのはやはり若者らしくない。新しい「技術」を学ぶには、覚悟を決めて、早く手をつけないと、どんどん遅れていく。忘れてはいけない過去もあれば、忘れていい過去もある。

説得はハードな方法とソフトな方法

どうやって説得すれば良いのだろう。
ハードな対応とソフトな対応がある。
ハードなものはこうする。
「受験した中学に受かった人はもう、算数を捨てて、数学に切り替えている。うまく行かなかった君が、まだ算数にしがみついているのは、少しおかしくないか。切り替えが大切だ。算数がうまく行かなかったのではなく、切り替えがうまく行かなかったのが実は原因かもしれない、と考え直してみてはどうか」

そして高校数学の教科書を見せてあげればいい。理系志望の人には数Ⅲの微分積分を見せて「あと5年以内にこれができるようにならないといけないのだ」と示せば、実はまだまだ入り口だ、ぐらいのことは、わかる人にはわかる。

ソフトなものとしては
「今まで算数で勉強したことは決して損にはならない。むしろこれから生きてくるだろう。新しいものをもらったのなら、新しい袋に入れるほうが見栄えも良い。君自身が新しくなることでまた未来が開けるだろう」

そして百分率の絡んだ計算や、円周率はπになっていて、以前よりも楽になっていることや、方程式は「言葉の順番の通りに並べる」ことが基本だと強く指導すれば、算数の「逆に考える」やり方から、脱却していくだろう。

私が「子供って案外がんこだな、保守的だな」と思うのはこういう面を見続けてきたからかもしれない。確かにエネルギーには満ちている。しかし方向を決めるには少し年齢が足りないのが大きい。そこは大人、親・保護者、学習指導者が示す必要があるだろう。

知ることで世界が広がる

少し話がそれるが、現代と昔が大きく違うのは、ネットが普及してなんでもすぐにわかるようになったことだ。ただしネットの知識は、表層的だ。誰だって自分だけが知ってしまった、奥の深い真実をタダで教えるほど、バカではない。その時は、何か「対価」が必要になる。あくまでネット上の知識は「撒餌」だ。

そしてネットがあるから、暗記は不要、覚えていなくても大丈夫だ、という極論を主張する人が増えてきた。私はへそ曲がりだから「ホントか」と疑っている。テストにスマホ、パソコン、タブレットなどを持ち込んでいいとしても、テストなら時間制限か、提出の順番制限ぐらいはあるはずだ。締切がなけば漫画家は漫画を描かない。

その限られた時間で、必要な情報を探し、しかも問題を解決する、なんてことができるのだろうか?出された問題が見たことのないようなものでも、見たことがあるものに、還元して考えるしか方法はない。

人間の発想はとりあえず「知っているもの」から始まる。
ウルトラ・シリーズに出てくる怪獣や宇宙人、宇宙生物たちは、ザリガニやカニ + セミ =バルタン星人、などなど、現在地球にいる動物や昆虫の「混合体」だ。宗教上の悪魔や悪霊、精霊などの形態も、牛+人 = 鬼、角 + 馬 = ユニコーン、翼 + 人 = 天使とか、色々な動物=あるいは人でないもの同士と、人とを組み合わせた。

新しい世界に乗り遅れるな

新しく数学の世界が始まったのだから、新しいことを知ろう、と親・保護者や、学習指導者は促し、励まさなければならない。そして、たくさんの「種」や「核」があれば、色々な角度から見ること、さらに考えることができる。まさに日頃から多くの知識を持ち、「なぜだろう」と疑問も持ち、解決方法を探っている人の方が有利なのは明らかだ、と諭す。

そして覚えていない人と、覚えてやり方を知っている人、やり方を完全に身に付けている人、さらにはやり方を複数身に付けてしまっている人を比べれば、断然最後の人が勝つに決まっていると、断言すればよい。

そうすれば新中学1年生は勇気を持つだろう。
新技術=中学数学の世界へ小学校卒の人たちを導くには苦労が多いが、このへんがうまくいくことが、中々楽しいから、学習指導をしているのかもしれない、と最近、自分の生き方を見直している。